愛着を育てるブランディングとは?

「機能は十分。価格も適正。なのに選ばれ続けない。」
多くの経営者が抱くこの違和感は、決して珍しいものではありません。
目に見える性能や価格では説明できない “選ばれる理由” こそが、ブランドの本質だからです。
DNARBは、その理由を「愛着」と捉えます。
ブランドとは表層的な見せ方ではなく、顧客や社員が心から共感し、繰り返し選びたくなる “意味のある違い” を育てる営みです。
1. なぜ「愛着」がブランドの核心なのか
今の時代、価格や機能だけで商品やサービスを選ぶ人は少なくなっています。情報が行き渡り、品質が平均化した市場では、どこを選んでも大差がないと感じられがちです。
そんななかで問われるのは、「なぜ、このブランドを選ぶのか?」という理由です。
選ばれ続けるブランドには、「愛着」が育っています。
それは単なる便利さやコストパフォーマンスではなく、消費者がそのブランドに自分だけの「意味」を見出している状態です。
愛着が生まれると、人は比較や競争の土俵から離れ、そのブランドを唯一の選択肢として選び続けます。だからこそ、愛着はブランドの核心であり、競争から自由になる力を持っているのです。
2. 愛着を育てるブランディングとは何か
DNARBが定義するブランドとは「選ばれる違い」です。
しかし、その「違い」が機能や価格の一時的なものであれば、すぐに他に取って代わられてしまいます。本当に強いブランドは、「意味のある違い」を持ち、それが愛着として受け手の心に根づいているものです。
愛着を育てるブランディングとは、見せ方を整えることではありません。
ブランド理念を掘り下げ、問いを立て、ストーリーを紡ぎ、日々のふるまいとして体現していくことです。言い換えれば、「愛着が生まれる導線」を設計する営みそのものです。
その導線は、顧客にとっては「また選びたい」という納得感になり、社員にとっては「ここで働きたい」という共感になります。
つまり、愛着は顧客だけでなく、組織内部にも生まれるものなのです。
3. どうやって愛着を育てるブランドをつくるのか
愛着は一夜にして育つものではありません。
DNARBでは、以下の6つのプロセスを大切にしています:
- 敵(課題)を明確にする
ブランドが立ち向かう社会的・文化的な課題を定義する
- ミッションやビジョンを掘り下げる
「どういう世界を目指すのか」を明確にする
- ブランドコンセプトを言語化する
思想や哲学を一言に凝縮する
- リソースを集中させる領域を決める
有限の資源を一点に集めて一貫性をつくる
- 世界観を構築する
デザイン・体験・メッセージを通して一貫した表現をする
- 顧客との関係性を育む
体験を通して愛着を積み重ねていく
このプロセスを経ることで、ブランドは「意味のある違い」を持ち、それが愛着へと育ちます。
事例①:バーバリー デジタルとリアルを一貫した体験で顧客との親密さを育む
バーバリーは、SNSやライブ配信、EC連動などを単なる販促手段ではなく、「ブランドとの距離を縮める体験」として設計しました。
たとえば、ファッションショーをライブ配信し、その直後からECで販売を開始する仕組みは、顧客に「特別感」と「即時性」を同時に届ける試みでした。さらに「Art of the Trench」では、顧客自身がトレンチコート姿を投稿・共有できる場を提供し、顧客同士の共感を育てました。
事例②:ヤンマー — 哲学をデザインと物語に昇華させ、共感を拡げる
ヤンマーは創業以来の理念「HANASAKA」を軸に、社員ワークショップを通じてブランドの在り方を共有し続けています。
また、デザイン面では「柔和剛健」という哲学を掲げ、スタイリッシュかつ社会と共鳴する表現を追求。展示会「YANMAR DESIGN みらいのけしき展」を通じて広く発信しました。
さらに、アニメ制作プロジェクト『未ル(MIRU)』では、「人と自然の調和」というパーパスをテーマに、未来志向のブランドストーリーを映像として届けています。これは広告ではなく、一つの作品として誠実に制作された点に大きな特徴があります。
4. まとめ:あなたのブランドは何を育てているか
ブランドの強さは、売上や広告効果だけでは測れません。
顧客や社員の心にどれだけ「愛着」が育っているかが、本当のブランド価値を決めます。
では、あらためて問いかけます。
あなたのブランドは、顧客や社員にどんな愛着を育てているでしょうか?
その問いに向き合うことから、「競争しないブランドづくり」は始まります。
DNARBでは、「愛着を育てる」を戦略的なテクニックではなく、ブランド哲学を体験へと翻訳し、共感が積み重なる設計として経営に取り入れる支援をしています。