透明性がブランドになる時代

なぜ、いま「透明性」が問われているのか
かつては価格や機能の優位性が、企業が選ばれる理由でした。しかし今、人々がモノやサービスを選ぶときに求めているのは、それだけではありません。
「なぜそれを作ったのか」「どんな考え方に基づいているのか」といった “背景” です。つまり、信頼できるものを選びたいという欲求が、これまで以上に強くなっているのです。
SNSやレビューサイトによって情報がすぐに共有される現代では、企業がどんな価値観を持ち、どのような姿勢で取り組んでいるかが、簡単に可視化されます。
だからこそ、企業は自らのあり方を意図的に “見せる” 必要があるのです。透明性があることは、もはや「信頼されるための前提条件」であり、それがなければどれほど優れた商品でも “選ばれる存在” にはなり得ません。
透明性とは、ただ情報を公開することではない
透明性というと、つい「たくさん情報を出すこと」と捉えがちです。しかし、単なる情報開示は、時にノイズにもなります。大切なのは、「どんな姿勢で」「何を大事にしているか」が伝わることです。
たとえば、製造工程の動画を見せるだけでは不十分です。「なぜこの工程を選んだのか」「どこに手間や工夫をかけているのか」まで語ることで初めて、その背景にある価値観や哲学が伝わります。
さらに言えば、「まだ試行錯誤の途中です」といった未完成さをも誠実に見せることが、かえって深い信頼を生むこともあります。透明性とは、完成されたイメージを提供することではなく、 “過程をともにする姿勢” を共有することなのです。
透明性が「選ばれる違い」になる理由
たとえ似たような商品・サービスがあっても、透明性のあるブランドは違って見えます。それは、そこに “物語” や “意味” があるからです。
「誰が、どのような想いで、どんな工夫をしているか」がわかることで、その商品に “共感” が生まれます。そしてその共感こそが、高価格でも買ってもらえる選ばれ方を生むのです。
人は、自分が選ぶものに “自分らしさ” や “価値観” を投影します。ただ便利だから、安いから選ぶのではなく、「このブランドを選ぶ自分でいたい」と思えることが、今の時代の購買動機です。
だからこそ、ブランドは自らの価値観や選択の背景を丁寧に伝えることで、 “共に在る” という関係性を築けるのです。透明性は、その関係性の入口になります。
透明性がブランド価値につながった企業の例:花王の取り組み
たとえば日本の大手日用品メーカー・花王では、サステナビリティサイトを通じて環境・社会課題に対する取り組みを詳細に公開することで、消費者からの信頼を長年築いてきました。
さらに、花王では開示すべき情報の内容や表現について、社内での議論を重ねるプロセスを設けており、部署横断の取り組みとして開示内容のブラッシュアップを進めています。
このような取り組みは、企業の「過程を見せる姿勢」そのものがブランドの信頼性を高める好例だと言えるでしょう。
DNARBが考える、透明性のデザイン
私たちDNARBは、透明性を単なる手段ではなく、ブランドづくりの中核に位置づけています。スローガンや理念を掲げるだけでなく、日々のコミュニケーション、社員のふるまい、開発のプロセスまで、一貫した姿勢を見せること。それこそが “信頼できるブランド” を育てる土壌になると考えています。
たとえば、プロジェクトの進行段階で「まだ答えは出ていないが、こういう方向で考えている」と正直に語ること。あるいは、「これはチャレンジングな選択だが、私たちはこう信じて進めています」と言い切ること。こうしたメッセージは、完成品では伝えきれない “人の思い” を届けます。
透明性とは、企業の未完成さも含めて共有する姿勢の表れです。私たちは、パートナーブランドとともに、その姿勢を丁寧に示していきます。
これからのブランドに問われる「見せる覚悟」
時代は「隠すことで守る」から「見せることで信頼を得る」へと移りつつあります。そして、透明性はリスクではなく、むしろ競争しないための “意味のある違い” としてデザインされるべきものです。
ブランドにとっての透明性とは、自社の強みをアピールすることではなく、「なぜそれを見せるのか」「どう受け取られたいのか」を自覚することです。単なる情報発信ではなく、相手との関係性を築く “対話” としての表現。それには、見せる内容と同じくらい、見せる覚悟が問われます。
あなたのブランドは、自社の価値観や意思決定の理由を語れるでしょうか。そして、それを “誰に” “どうやって” 見せるべきか、意識できているでしょうか。これからのブランドには、単なる発信力以上に、「見せることの意味」を問い続ける姿勢が求められています。
DNARBでは、「透明性」を単なる情報公開ではなく、 “信頼を育てるふるまい” としてブランドに組み込む支援を行っています。