共感するふるまいがファンを生む

はじめに:「共感」って、結局なんなのか?
「共感が大事」とは、もはや耳慣れた言葉かもしれません。
SNS、広告、採用、商品開発──あらゆる場面で「共感」がキーワードのように使われています。しかし、その言葉の “本当の意味” や、 “構造としての重要性” が語られることは、意外と少ないのではないでしょうか。
たとえば、あるブランドを「なんとなく好き」と感じるとき、それはスペックや価格の比較を越えた、もっと深いレイヤーの “理解” が作用している証拠です。
ブランドが「共感される」存在であるとは、言い換えれば、選ばれる理由が “合理” から “感情” へと移行している状態です。
第1章:「選ばれる構造」が変わってきている
かつては、商品が選ばれる理由は明快でした。安い、早い、高機能。しかし今、それらの要素はあっという間に他社に真似され、どの会社の商品も似たような品質・価格帯で提供されるようになっています。
現代では、どの商品も「一定以上のクオリティはある」ことが当たり前になりつつあり、見た目や機能、価格も似てきています。これを「コモディティ化」と呼びます。
つまり、「どれもそんなに変わらない」時代に突入しているのです。
だからこそ、人は「どれが一番いいか」ではなく、「どれに自分らしさを感じるか」「どれに共感できるか」を基準に選び始めています。
第2章:「共感」はどうやってブランドになるのか
共感とは、感情的に盛り上がるだけのものではありません。むしろそれは、ブランドが持つ「一貫した姿勢」や「ふるまい」によって、静かに積み上げられる信頼のようなものです。
たとえば、どんなに立派な理念を掲げていても、日々の言葉やサービスにそれが反映されていなければ、共感にはつながりません。
DNARBでは、共感を次のように捉えています。
共感とは、 “私もそう思う” という感覚が、言葉を超えて伝わる構造である。
そのためには、「余白」と「姿勢」が欠かせません。余白とは、顧客が自分の解釈を挟めるスペース。姿勢とは、決して押しつけずに、一貫してその世界観を体現しつづけるふるまいです。
第3章:共感がもたらすブランドの3つの効果
では、ブランドに共感が育つと、どのような経営効果が現れるのでしょうか。
1. 価格に対する納得感が高まる
共感されているブランドは、単なるモノやサービスではなく、 “意味ある存在” として認識されます。そのため、価格は “損得” ではなく “価値” として受け取られるようになります。
2. 長期的なファンが育つ
機能に惹かれて購入した人は、より良い機能が出れば離れていきます。一方で、価値観や姿勢に共感して購入した人は、「このブランドと一緒にいたい」「応援したい」と思うようになります。それは単なる “買い物” を超えた関係性であり、ファンや支援者のような立場へと変わっていきます。
3. 社員との関係も変わる
共感は社外だけでなく、社内にも影響を与えます。ブランドの思想に共感して入社した社員は、理念に沿った行動を自主的に取るようになり、組織全体に一貫性が生まれます。
第4章:共感を軸に育てているブランドたち
たとえばFrancfrancは、「好きな『いろ』で生きよう。笑おう。」というメッセージを掲げ、日々の暮らしの中で自分らしさを大切にしたいと考える人々に寄り添っています。
彼らは単にインテリア雑貨を売っているのではなく、「好きな色を選ぶ」「自分の空間を自分らしく整える」といった行為そのものに価値を見出し、それを後押しする世界観を丁寧に設計しています。
この姿勢に、多くの人が「私も、自分らしい暮らしを選びたい」と共感し、ファンになっていく。実際にSNSでは、顧客自身がFrancfrancの商品を使った部屋をシェアし合い、ブランドとユーザーとのあいだに自然な共感の循環が生まれています。
(参照元:https://www.francfranc.co.jp/press/2017/ff_pressrelease_20170127)
また、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」では、「ご当地楽」というプログラムを通じ、地域固有の文化・工芸・芸能を宿泊体験に組み込んでいます。
たとえば「界 奥飛騨」では、飛騨の木工技術を活かした「曲木バッグハンドル作り」が体験でき、訪れる人はその土地ならではの手仕事や歴史を直接感じることができます。
こうした体験は単なる観光サービスではなく、「この土地、この瞬間、この場所でしか味わえない価値」を提供します。顧客はその時間や感情に共感し、再び訪れたいという想いを抱くようになります。(参照元:https://hoshinoresorts.com/ja/brands/kai/)
Francfrancと星野リゾートはいずれも、価格や機能だけでなく「感じる世界観」や「体験の質」で選ばれるブランドです。共感は理念を掲げるだけではなく、その理念を顧客が日常や旅の中で実感できるかどうかで育まれます。
中小企業においても、理念や哲学を丁寧に言語化し、ブレのない姿勢で発信していくことができれば、共感は確実に育てられます。
DNARBでは、その “にじみ出る共感” をブランド設計の中核に据え、支援を行っています。
おわりに:あなたのブランドは、何に共感してほしいのか?
共感は、演出するものではありません。
背伸びせず、かといって迎合もせず、自社の “らしさ” を一貫して体現していく。そこに「私もそう思う」「わかる」と感じる人が現れたとき、共感がブランドになります。
あなたのブランドは、どんな姿勢に、どんな世界観に、誰の共感を育てたいでしょうか?
その問いに向き合うことが、これからの選ばれる理由をつくる第一歩になるのかもしれません。
DNARBでは、「共感されるブランド」を演出ではなく、 “ふるまいの設計” として支援しています。