ブランドはなぜ従業員エンゲージメントを高めるのか?

はじめに:なぜ今「従業員エンゲージメント」に目を向けるべきなのか
従業員エンゲージメントという言葉が使われるようになってきました。これは「従業員が自社や仕事に対して感じる愛着・共感・主体的な関わり度合い」を指す概念です。
多くの企業が、採用難・離職率の上昇・組織の活力低下といった課題に直面する中、「給与や福利厚生の改善」や「制度の刷新」だけでは本質的なエンゲージメントが育たないという実感が広がりつつあります。
では、どうすれば従業員がより深く会社と関わり、意欲的に働ける文化が育まれるのでしょうか。
この問いに対して私たちDNARBは、ブランドづくりの視点が欠かせないと考えています。なぜなら、ブランドとは「競争しないための意味のある違い」を育てていく活動であり、その意味は顧客だけでなく、従業員の内側にも深く作用するからです。
ブランドがエンゲージメントに影響する理由とは
1. ブランドが「共通の意味」を組織に与える
ブランドは単なるデザインや広告表現ではなく、組織に共通の意味軸を与えるものです。
従業員一人ひとりが「私たちの会社はなぜ存在するのか」「どんな未来をつくろうとしているのか」に腹落ちしている状態。この状態こそが、エンゲージメントの根幹です。
意味のない場所に人は愛着を持てません。逆に、意味が丁寧に共有されている場には、自然と主体的な関わりが育まれていきます。
2. ブランドは「選ばれる違い」だけでなく「働く理由」を育てる
私たちはブランドを「選ばれる違い」と定義しています。
これは顧客にとっての選ばれる理由であると同時に、従業員にとっての「ここで働く理由」でもあります。
給与や待遇を超えて、「このブランドの世界観に貢献している」という実感は、深いエンゲージメントを支える要素となります。
3. ブランドが育つプロセス自体が愛着形成の導線になる
さらに重要なのは、ブランドが形づくられていくプロセスそのものが、従業員にとっての愛着を育む導線になることです。
「自分たちはどうありたいのか」「どんな価値観を大切にしたいのか」を共に問い、言語化し、表現へと落とし込んでいく。その過程は、従業員にとって自社との距離が縮まる体験であり、『このブランドは自分たちのものだ』という意識の土壌になります。
【参考事例】
たとえば日本の製造業「愛三工業株式会社」では、従業員と経営が対話する「愛三カタリバ」を全社展開し、従業員主導のキャリア開発支援を導入しました。
これにより、職場風土が受け身から主体的な関係へと変化し、「経営への信頼」が前年比で大きく改善。ブランドの意味を共に言語化・体感するプロセスが、エンゲージメント向上に直結した好例です。(参照元:https://www.aisan-ind.co.jp/sustainability/human_capital.html)
DNARBの視点:愛着を育てることで生まれる組織の変化
1. ブランドづくりのプロセスが文化を育てる
私たちDNARBは、「愛着を育てる」という思想のもと、ブランドづくりのプロセス自体に価値があると考えています。
完成されたブランドイメージをつくること以上に、従業員が対話を通じて自分たちの哲学を見つめ直す体験が、組織文化の核を形成します。
ブランドとは、外に発信するものであると同時に、内側の姿勢を育てていくものです。
2. 哲学や価値観の言語化が腹落ちを生む
多くの企業では、経営者やリーダーが大切にしている価値観が明文化されていないことが少なくありません。
ブランドづくりのプロセスでそれらを言語化することで、従業員は「ああ、これが私たちの大切にしていることなのか」と深く納得します。この腹落ち感が、行動や意思決定の指針となり、エンゲージメントの土台になります。
3. 従業員の愛着がブランドの一部になる
私たちが大切にしている言葉に、「従業員の愛着がブランドの一部になる」という考えがあります。
ブランドは、広告の成果ではなく、日々のふるまいの積み重ねで育つものです。その主役は、まぎれもなく従業員一人ひとりです。
従業員がブランドに愛着を持つとき、その言動には自然とブランドらしさがにじみ出ます。これは一過性ではない、持続可能なブランドの強さとなって表れてきます。
ブランドとエンゲージメントの好循環を育むために
1. 理念とブランドの一貫性が信頼を生む
従業員エンゲージメントを高めるには、経営理念とブランド表現の一貫性が不可欠です。
もし理念が掲げられていても、ブランドがそれと矛盾する言動を取っていたら、従業員は違和感を覚えます。
逆に、一貫性があるブランドは、従業員にとっての誇りや信頼の源泉となり、エンゲージメントの土壌となります。
2. ブランド体験を「従業員向け」にもデザインする
ブランドというと顧客体験に注目が集まりがちですが、従業員こそが最初のブランド体験者であるべきです。
日々の社内コミュニケーション、社内制度や評価の設計など、あらゆる接点においてブランド世界観が体感されること。それが、エンゲージメントを育てる鍵となります。
3. エンゲージメントを育てる問いから始める
ブランドづくりは、問いから始まります。
「私たちはなぜこの事業をしているのか?」
「このブランドを育てることで、従業員にどんな誇りを届けたいのか?」
この問いを、経営者と従業員がともに考える時間こそが、ブランドとエンゲージメントをつなげる真の起点です。
まとめ:あなたのブランドは、従業員にとってどんな存在ですか?
ブランドは、ただの外向けの装飾ではありません。従業員にとっての誇りや共感を育む、経営資産そのものです。
あなたの会社のブランドは、従業員にとってどういう存在でしょうか。
従業員が「このブランドだから働きたい」「このブランドの未来に関わっていたい」と心から思える状態は、育まれているでしょうか。
この問いに、いま一度立ち止まって向き合うこと。それこそが、組織の内側からブランドを強くし、未来に向けた文化を育てる第一歩になるのではないでしょうか。
もし、「従業員の共感や誇り」を組織の中心に据えたブランドづくりにご関心がありましたら、私たちDNARBがご一緒できることがあるかもしれません。